器用な人ほど不器用さを利用してみる

〜横隔膜に任せて働いてもらう〜
つくば教室のヴォイトレレッスンに通ってくださっているKさんは、イベントや人前での歌唱経験も豊富で、さまざまなジャンルの曲をとても器用に歌いこなされる方です。
曲の雰囲気を掴む感覚も優れていて、歌詞の意味や感情をメロディーに自然に乗せることもお上手。「器用な人」という印象を持っていました。
けれど一方で、その器用さが、歌声を小さくまとめてしまい、本来持っているもっと豊かな響きを狭めてしまう部分がありました。
「もっと大きく歌える方なのに、もったいないな」と感じていたのです。
そこで最近は、喉を働かせすぎず、横隔膜を外に張って体全体で支える歌い方を意識するレッスンを積み重ねています。
横隔膜という筋肉は、自分の意志でもある程度は動かせますが、実はその半分以上は無意識のはたらきに委ねられています。
つまり、「頑張って動かそう!」と思っても、思い通りにいかない部分があるのです。
それが、最初はもどかしく感じられるかもしれません。けれどこの「思い通りにならない不器用さ」が、実はとても大切なのです。
思うように動かそうとせず、任せてみる。
体の奥のはたらきに信頼を置いてみる。
すると、喉だけで頑張る歌い方ではなく、全身で支え、自然と響く声が出てくるようになります。
器用な方ほど、その器用さを手放して、「うまくいかないこと」に身をゆだねてみる。それは、新しい可能性への扉を開くことでもあります。
Kさんの声は、そうした取り組みの中で、以前よりずっと自由に、豊かに響きはじめています。
「不器用さ」に身をゆだねることで、むしろ自分本来の声に近づいていく。
そんな過程を、これからも一緒にたどっていけたらと思っています。
対面 レッスンはつくば市の他に 柏市でも行っています。また オンライン レッスンのご用意もありますので、お気軽にご相談ください。