能動と受動の練習

たとえば、こんな経験はありませんか?
大きな声で自己主張する人の前で、何も言えずに黙り込んでしまったり──
あるいは、誤解を解きたくて焦って、つい一方的に話しすぎてしまったり。
私たちは時に「伝える力」と「受けとる力」のバランスを崩してしまうことがあります。
これって実は、歌もよく似ているんです。
歌うということは、自分の声を外に出す「能動」の行為。
でもそれだけではなく、伴奏をしっかり聴く「受動」の姿勢も、とても大切なんですね。
自分からの「矢印」を相手に届けること。
そして、相手からの「矢印」をちゃんと受け取ること。
その両方に、ていねいに意識を向けていく練習を、レッスンでは積み重ねています。
そうしているうちに、耳の使い方が少しずつ変わっていきます。
そして不思議なことに、耳が変わると、心の使い方まで変わっていくんです。
アンサンブル──つまり「調和して演奏する」ということが自然にできるようになってくる頃、
ふと気づけば、人との関係も、少しずつ変わり始めているかもしれません。
歌を通して、「自分」と「相手」のあいだにある、心の呼吸を感じてみませんか?
